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 倅が私の読みかけの本を見て言う。「また廃墟か」と。どちらかというと軽蔑したふうに。私は廃墟に興味がある。古くは、城跡、観光課されていない天守閣などなく、天守閣跡と小さな看板があるようなところがいい。鉄筋コンクリート作りのエレベータ付きの城などは興ざめする。また、近世の廃墟(その多くは昭和)には何とも言えない朽ちてゆく過程の美しさがある。かつては大勢の家族が来て楽しんだだろう遊園地、ホテル、工場、学校など。大きな夢の足跡とさえ感じることが出来る。
 かつての夢の欠片がまだ少し残っているような美しさを感じる。人は変わった趣味だとおもうでしょうが・・。
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 昨年に生まれた子の数が百数万人だという。これは1970年代のおよそ半分である。また3年前から人口そのものも減少したという。それまでは増加率が減少だったが。
 このままいけば日本は小じんまりした小ない人口の国になってしまうが、それもいいかなとも思う。(税金・年金問題はともかく)ただ、大学は今後さらに存続が難しくなりそうである。確か大学定員は八十万人くらいだったと思うが。今後倒産する大学が100を超えるだろうと予測する人がいるが、それもまんざら誇張でもない気がする。
 人は運のいい人と悪い人がいる。最初に何処に生まれてきたかがすでに運である。親子数代働かなくてもいいくらいのお金持ちに生まれるのか、赤貧洗うがごとくの家にうまれるのか、はたまた雪国に生まれるのか、暑い地方か、都会か田舎かである。生まれてきたところで人生のほぼ半分が決まると言っても過言ではない。たとえば熱帯地方に生まれた人は、よほどの事がない限りスキー・スケートの選手になり世間で名をあげることもないだろう。
 そして育った家の環境にもよる。物心がつき自分の環境に気づき努力をしたところですでに遅しということもある。
 また、さほど努力もしていないのに推薦でそこそこの学校に入り、就職もそこそこということもある。反面かなり努力をしているのであるが肝心の試験に体調をくずし、よくない結果を出すこともある。本人がかなりの努力をしているのに誰も認めてくれないこともある。所謂「縁の下の力持ち」が評価されないことである。しかし、私はそういう人は好きである。これは自分がそうだからかもしれない。
 必死に働いているのに平均より低い所得。他に評価されない待遇。ほとんどの人はこれである。要領よく生きている人は好きになれない。これは一種の彼我み根性だろうか?
 昭和の中ごろ、市内に誰もが知るS子さんという女性がいた。この人の職業は糞尿の回収、すなわち当時「肥汲み」と言われる職業である。当時は水洗便所もなくほとんどの家庭が昔ながらの汲みとり式の便所であり、バキュームカーもあるにはあったが市全体をカバーすることも困難な時代であった。また車が入ることも出来ない狭い路地裏にも困難なときもあった。そのため人力が必要だったのである。
 このS子さんの名は市長より有名で、市内にでは知らない人はいないくらいだった。ただしそのほとんどは名字を知らなかった。ただS子さんと呼ばれていたのである。仕事は大八車に桶をいくつか乗せ、ひしゃくで汲みだした糞尿を入れ家から家へと移動するのである。S子さんは前で大八車を引っ張り、後ろは無口な男性が押しているのである。ただただ黙って大八車を押すのである。S子さんとの関係は解らないが、どうも父親の様であった。
 道を行けば、中学生くらいはからかうこともあっただろう。事実「昨日S子を見た。」とか「お前はS子見たいだ。」とふざけあっていた。しかしこのS子さんからかわれても怒ったということを聞いたことがない。いつも一所懸命に車を引き、お客さんには笑顔で対応してした様である。各家庭から「S子さん、うち頼むわ。」といえば「あいよ。」と元気のいい返事。「Sちゃん!次はうちね。」と声をかければ「あいよ。ここ終わったら行くよ。」という会話。職業柄、人からは下げずまれていたのだが、市民には愛されていたようである。
 私が最後に見たのは、小学生の終わりか、中学生の初め頃だったと思うが、もう水洗便所が普及し始めた時である。自動車も多くなった市道で汗を拭きながら、いつものトレードマークの帽子をかぶり大八車を引いていた。その時の印象は、ずいぶん歳を取ったなというものであり、なぜか非想観を感じた。
 彼女は知能的に劣る人だったと人は言っていたが、自分のやるべき仕事をしっかり理解していた人だった。存命ならもうかなりの高齢だと思うが、市民栄誉賞なんてものがあれば彼女ほど受章に適した人はいないと思う。
 しかし、体調不良で全コンサートが中止。なんのために来日したのか?
こんな田舎ゆえコンサートを見る機会もないが、一度は見てみたいものです。
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